「CEO 転職」で検索しても、社長の求人はほとんど出てきません。求人サイトにも、スカウトサービスにも並んでいない。これは、あなたの経歴が足りないからではありません。CEOのポジションは、そもそも公開されない場所で決まっているからです。
では、どこで決まっているのか。そして、いま部長や執行役員の立場にいる人が、そこに届くにはどうすればいいのか。実際の選考で起きていることを書きます。
なぜCEOの求人は公開されないのか
理由は単純で、現職の社長がまだ席にいるからです。
「次の社長を探している」と公にした瞬間、何が起きるか。社員は動揺し、取引先は不安になり、金融機関は説明を求め、競合はそれを材料に使います。上場していれば株価にも響く。探していること自体が、経営上のリスクになります。
だから水面下で進みます。声がかかるのは、その企業の株主か、株主が信頼している一部の相手だけ。求人票は作られず、応募という手続きも存在しません。
これは「隠れた優良求人」といった話ではなく、経営トップの採用という行為の性質です。
社長のポジションが発生する、4つの局面
公開されないとはいえ、発生する場面は決まっています。企業の資本や株主が動くときです。
1. 事業承継
創業者が引退を考えているが、親族にも社内にも継げる人がいない。会社を売らずに残したい場合、外から経営を担う人を迎えることになります。初代の外部社長として入る形です。
2. カーブアウト
親会社から事業が切り出され、独立した会社になる。人事制度も、意思決定の仕組みも、企業文化も、一から作り直す必要があります。親会社の論理が通じない場所で経営できる人が求められます。
3. TOB・非公開化
上場企業が買収され、非公開化される。四半期開示から解放される代わりに、投資家との約束を数年で果たす必要が出てきます。財務規律と事業成長を同時に見られる人が要ります。
4. PEファンドの投資実行後
ファンドが会社を買い、企業価値を上げるフェーズに入る。前任の経営陣が残る場合もあれば、入れ替わる場合もあります。投資期間という締め切りがあるのが、他の局面と決定的に違う点です。
いずれも「業績が悪いから社長を替える」という話ではありません。会社の形が変わるから、それを動かせる人が要るという順番です。
登録者の約4割は、部長・室長クラス以下です
ここからは、当社の実際の数字です。
直近半年にウェブからご登録いただいた方の、登録時点での役職を集計しました。
| 登録時点の役職 | 割合 |
|---|---|
| 代表取締役・社長 | 23% |
| 取締役・役員 | 28% |
| 執行役員 | 11% |
| 本部長・部長・室長 | 30% |
| 課長・その他 | 8% |
本部長・部長・室長クラス以下が、およそ4割を占めます。 大手メーカー、総合商社、製薬、通信、コンサルティングファーム。誰もが知る企業の、事業部長や経営企画室長といった方々です。
つまり、社長のポジションを目指す人の多くは、社長でも役員でもない段階から動き始めています。 「役員になってから考えよう」と待っている間に、同じような経歴の人が既に接点を作っている、というのが実際のところです。
実際に決まった方
企業が特定されないよう抽象化していますが、いずれも実際の決定です。
- 60代・時価総額1兆円超の製造業でCEO → PEファンド投資先のCEO(製造業)
- 50代・外食企業のCEO → PEファンド投資先のCEO(外食業)
- 30代・ファンドのCFO → PEファンド投資先のCFO(IT業)
年齢の幅を見てください。30代でも60代でも決まっています。 任せる側が見ているのは年齢ではなく、その会社がいま必要としている経験を持っているかどうかです。
扱っている案件の年収帯は、2,000万円台から5,000万円台。ストックオプションが付くものもあります。
役員未満から届く人は、何が違うのか
選考で見られていることは、思われているほど「実績の大きさ」ではありません。
一つ目は、外から入って組織を動かした経験があるか。 創業でも、社内で昇進したのでもなく、既にある組織に途中から入って結果を出した経験です。会社の形が変わる局面では、これが最も近い経験になります。
二つ目は、株主が何を求めているかを言葉にできるか。 誰が株を持ち、何年で何を実現したいのか。そこを理解せずに「良い会社にします」と言っても、話が噛み合いません。
三つ目は、過去のやり方を手放せるか。 前職で成功した方法がそのまま通じる会社は、ひとつもありません。実績のある方ほど、ここで見送りになります。この点はCEO転職の最終面接で見送りになる理由にくわしく書きました。
なお、ファンド側もファンド案件の経験がない方のポテンシャルを重視する傾向が強まっています。 大企業での事業変革や、急成長フェーズを牽引した実績があれば、入社後に流儀を身につけられる柔軟性のほうが重く見られます。
いつ動き始めるべきか
「良い話があれば」では、間に合いません。
会社の形が変わる局面は、いつ来るか予測できません。そして発生してから決まるまでが速い。当社の場合、案件をお預かりしてから複数名を推薦するまでが1〜2週間です。そのとき候補に挙がっていなければ、その案件は存在しなかったのと同じになります。
いますぐ動くつもりがなくても構いません。むしろ、転職を決めていない段階のほうが、条件を冷静に見られます。
現職に知られないよう進めることもできます。ご本人の許可なく、企業側に情報をお伝えすることはありません。
いま実際にどのようなポジションが動いているかは、非公開の経営ポジションのご案内にまとめています。事業承継、カーブアウト、TOB後の非公開化——この記事で挙げた局面の案件です。
採用する側の視点は、PEファンド投資先の採用やM&A後の経営体制のページに書いています。どんな基準で選ばれているかは、選ぶ側の説明を読むのが早いかもしれません。